不動産に精通している必要性
なぜ相続に携わる者が不動産に精通していなければならないかというと、私が不動産業界にいるときに相続した不動産に関してビックリする相談がよくあったのです。
例えば、親から相続した土地を兄弟平等に同じ面積で分筆した相続人の片方が売りたいと相談してきたことです。
もともと使っていなかった土地で、相続しても使わないだろうということでした。
ただ、その土地は都市計画で最低敷地面積が165㎡と指定されているニュータウンの土地であるにもかかわらず、分筆して兄弟それぞれの土地が165㎡未満になってしまっていたのでした。
分筆により165㎡未満の敷地になってしまっては建物を建築することができなくなります。本来建物を建てられる地域なのに建物が建てられない土地なんて誰も買おうとはしません。
たまに、この地域は坪いくら位だから・・なんて話しているのを聞きますが、買う人がいない不動産の価値は0に等しいのです。
何故このような分筆をしてしまったのか?と聞いたところ、相続に関しては主に税理士に手続きや納税の相談はしていたとのことでした。
兄弟で平等に相続しようということになり特に何も考えず分筆してしまったとのことです。
分筆したのですから、土地家屋調査士も携わっていたはずです。
相続登記をしたのですから、司法書士も携わっていたはずです。
税理士・司法書士・土地家屋調査士が携わっていたにもかかわらず誰もアドバイスしてあげられなかった結果です。
では、税理士・司法書士・土地家屋調査士が悪いのかというと悪いとは言い切れません。専門士業として依頼された専門分野の仕事はキッチリ行ったわけですから。
ただ残念ながら不動産のプロではなかったということです。
結局、兄弟で話し合っていただき、兄弟二人で1利用区画として売りに出すこととなりなんとか解決しました。
他の事例でも、道路に二方が接道しているからといって、それぞれの道路に接道するように分筆した結果、片方の道路は建築基準法上の道路ではなかったことが発覚し未接道の土地ができてしまった件。
遺贈された農地が農業委員会の許可がいただけなかった件。
建蔽率・容積率・用途制限・斜線制限を考慮しないで分筆してしまい土地の価値を下げてしまった件。 などなど結構多いのです。
では、不動産鑑定士や宅地建物取引士が不動産のプロなのかというと必ずしもそうとは言えません。
不動産鑑定士は鑑定のプロ、宅地建物取引士は取引のプロなのです。
不動産の流通・取扱いのプロは不動産鑑定士や宅地建物取引の中でも取引経験が豊富で常にトレーニングを受けている者が不動産に関する流通・取扱いのプロといえます。
そして、不動産がある相続問題においては「不動産に精通している事」は、とても大事なことだと考えております。
相続手続きの相談窓口では、「不動産に強い相続の専門家」が窓口になり、各専門士業と連携し、相続の生前対策や相続手続きのお手伝いをしております。