□不動産の相続対策と資産の組み換え
□負動産から富動産への不動産の組み換え
相続対策は大きく分けて「認知症対策」「分割対策」「納税対策」「節税対策」に分けられます。
人によって優先度は違うのですが、一般論としては前記の順番が優先度の高い順になっていると言われております。
特に不動産の相続対策では「認知症対策」は最初に行うべきこととなります。
契約ごとや不動産に関することは認知症になってしまったら自分一人の判断では何もできなくなってしまうからです。
認知症対策としては、財産管理委任契約・任意後見人契約や民事信託(家族信託)などの方法が良く取り上げられています。
次に「分割対策」です。
特に不動産に関しては、どの不動産を誰に引き継がせるか、共有にしないためにはどうすれば良いか、などが重要になってきます。
不動産には同じものがありません。当然価値も違ってきます。複数不動産を所有している場合に平等に不動産を引き継がせようとしても不動産だけで同じ価値にするのは難しいのです。
また、不動産を共有とすることはあまりよくありません。
特に兄弟姉妹で共有となると将来その兄弟姉妹の誰かに相続が発生したりして疎遠な相続人に相続された場合や共有者が多くなっていくと、その不動産の売却や活用がしにくくなります。
そういったことが起こらないようにするために「分割対策」として遺言書の作成や民事信託(家族信託)といった方法がとられます。
続いて「納税対策」ですが、納税は原則通貨で納税します。財産のほとんどが不動産であるという地主の方だったりすると、財産は多いのだけれど納税資金が準備できていないなどという事をよく耳にします。
相続が発生して相続税の納税までの期間は原則10か月です。
不動産を現金化するには時間が掛かります。
農地などは売却できない可能性もあり、売却できたとしてもさらに時間が掛かります。
相続が発生してから納税をどうしようかと相続人が考えて、結果的に不動産を売却して納税しようとするには10か月はあっという間です。
生前に対策をしておいてあげることは思いやりではないでしょうか。
最後に「節税対策」です。
不動産には様々な税制的な特例(小規模宅地等)があります。
流通価格と財産価格の乖離を利用したりすることも大事ですし、特例を利用して財産価格を下げることもできます。
また、負動産と呼ばれる流通価格より財産価格の方が高い不動産や収益性の低い投資不動産などを、富動産に変換する資産の組み換えも大切なになってきます。
昔と違い、不動産なら何でも相続したら嬉しいと思ってもらえる時代ではありません。
特に負不動産は相続しても相続人からしたら負担でしかありません。
現在は相続したい不動産と相続したくない不動産があると言われております。
負動産を富動産に変換するという事は、相続したくない不動産を相続したい不動産に変換するという事になります。
そして相続したい不動産は節税につながる場合が多いのです。
不動産の活用と言えば、遊休地にアパートを建てて収益を得る。更にはアパートを建てることにより相続時の財産価格を下げて、融資をうけることにより更に相続時の財産額を下げられるという提案をしている会社があります。ハウスメーカーなどから提案されることが多いようです。
それが良い活用方法かどうかの判断はどのようにされているのでしょうか?
遊休地にアパートを建てることが悪いと言っているわけではありません。
収益アパートにむいている土地であればですが。
もうすぐ日本では空き家が1,000万戸になると言われている時代です。人口は減ることがわかっています。
そのような状況で、提案されている土地にアパートを建てて10年・20年・30年と賃借人を確保できるのでしょうか?
アパートの建築費に対する利回りや収益率の計算で本当に正しいのでしょうか?
通常の収益不動産は土地価格も含めた金額から利回りや収益率を計算しますよね?
賃貸収入が下がっていくのに30年間サブリースを維持してくれるのでしょうか?
不動産投資以外で1,000万円以上の収入があるような人なら、収益不動産の減価償却などでプラス面も出てくる場合もあり一概にダメとは言いません。
不動産の活用では、「負動産」から「富動産」への組み換えが大切になります。
特に地主の方の多くは、単一の不動産だけを所有しているわけではなく、自宅、駐車場、生産緑地、賃貸マンション、商業施設、共有不動産、貸宅地、老朽化アパート、市街化山林、別荘等々。複数の不動産を様々な利用形態で所有されています。
そうした多様な不動産所有の形態を考慮せずに一面的なスキームで相続設計や不動産活用を行うと、それにより資産全体の視点から悪影響が生じることもあります。
複数の不動産を所有している方の場合は、まずは資産の全体像を把握する必要があります。その手法としては、不動産のポートフォリオをマネジメントすることです。
一番シンプルなものは「収益性」と「流動性」という基準です。
この「収益性」と「流動性」が「高い」・「低い」という観点から不動産を4つに分類します。
残す不動産とは、収益性も流動性も高い不動産のことです。いわゆる良い不動産と言え、代表例としては自宅等が該当します。
利用する不動産とは、収益性は高いが、流動性が若干低い不動産を指します。代表的には賃貸率の高い駅近賃貸物件が該当します。よく富動産と呼ばれています。
備える不動産とは、収益性は低いが、流動性が高い不動産を指します。駐車場や更地がこれに該当します。いざというときにすぐに現金化ができるというものです。
組み替える不動産とは、収益性と流動性が共に低い不動産を指します。相続する側からすると負担がばかりで「相続したくない不動産」という事になります。
代表例としては、共有地・貸宅地・老朽化アパート等々が該当します。
地主の方たちの悩みで多いのがこの不動産にあたります。いわゆる負動産です。
前記4つのポートフォリオに分類された不動産をどのように活用するかが大切になってきます。
「組み替える不動産」は文字通りできるだけ早く「利用する不動産」や「備える不動産」に組み替えたほうが良い不動産です。
「利用する不動産」への組み換えは負動産から富動産への組み換えであり、収益性も上がり、相続時の節税効果も高くなる組み換えです。
「備える不動産」への組み換えは相続時の納税対策にもなります。
特に相続対策を重要視するのであれば早めに、「利用する不動産」への組み換えをするべきです。
「利用する不動産」に組み替えることにより収益性があがり、その収益をもって相続時の納税資金もつくることができるようになるからです。