農地転用の届出制度
市街化区域内の農地を農地以外に転用する場合(農地法第4条)、農地以外に転用することを目的に権利移転する場合(農地法第5条)は農業委員会への届出が必要です。
農地転用許可制度
農地法では、農地の農業上の利用と農業以外の土地利用の調整を図りつつ、優良農地を確保するために、農地の転用にあたっては、農地法第4条、第5条に定める県知事の許可(市街化区域内の農地に関しては農業委員会への届出)を要する「農地転用許可制度」を定めております。
なお、農地法では、土地の造成のみを目的とする農地転用は原則許されません。
農地の種類と転用できない農地
農地には大きく分けて5種類の農地に分けられます。
第3種農地・第2種農地・第1種農地・甲種農地・農用地区域内農地に分けられます。
種類によって農地転用の許可を受けられない農地もあります。
第3種農地とは
鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域内の農地であり、原則として転用は許可されます。
第2種農地とは
市街化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地であり、周辺の他の土地に立地することができない場合等は転用が許可されます。
第1種農地とは
10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地であり、原則として転用は不許可となります。
甲種農地とは
市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地であり、原則として転用は不許可となります。
農用地区域内農地とは
市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地であり、原則として転用は不許可となります。
つまり、立地基準で農地転用が許可される農地は、第3種農地と第2種農地ということになります。
許可基準には立地条件の他に、更に一般基準というものがあります。
「事業実施の確実性」
・資力及び信用力があると認められること
・転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意があること。
・行政庁の許認可等の処分の見込みがあること
・遅滞なく転用目的に供すると認められること
・農地転用面積が転用目的からみて適正と認められること
「被害防除」
・周辺農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれのないこと
・農業用用排水施設の有する機能に支障を生ずるおそれのないこと
・土砂の流出、崩落等災害を発生させるおそれのないこと
結構大変です。
ですから、農地転用をする費用も結構掛かります。
そして許可申請をして許可が下りるまでの期間は横浜市を例にとってみると約1か月半くらいです。実際は許可申請前に事前相談に行きますので合計すると約2か月くらかかると思っていたほうが良いと考えます。
農地法第3条・第4条・第5条をもうちょっと詳しく
農地の処分・取扱いについては民法の特別法の位置づけである農地法の制限を受けるのです。
農地法とは、国民の限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源である農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食糧の安定供給の確保に資することを目的としています。(農地法第1条)
そして、農地の権利移転や転用の制限については農地法第3条・第4条・第5条で、その適用場面や要件、手続きのルールを定めています。
農地法第3条
適用場面
農地法第3条が適用されるのは、「農地または再送放牧地について所有権を移転し、または地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権もしくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、もしくは移転する場合」とされています。
例としては、農業を行うために、農地を購入する場合や、賃借する場合に、農地法第3条の許可が必要です。
権利が移動しても用途は農地または採草放牧地です。
農地⇒農地 ・ 採草放牧地⇒農地 ・ 採草放牧地⇒採草放牧地
許可権者
農地法第3条は原則として農業委員会の許可が必要です。
適用場面
農地法第4条が適用されるのは、「農地を転用するときです」。採草放牧地は適用されません。つまり、農地を農地以外にする場合となります。
例えば、農地上に住宅を建築するため、農地を宅地に転用する場合には農地法第4条の許可が必要になります。
転用とは、農地⇒宅地 ・ 農地⇒採草放牧地 ・ 農地⇒その他
許可権者
原則として、都道府県知事、または農林水産省が指定する市町村の区域内にある農地を転用する場合には、指定市町村の許可が必要です。
ただし、市街化区域内にある農地については農業委員会への届出制となっています。
適用場面
農地法第5条が適用されるのは、「農地または採草放牧地を転用するためにこれらの土地に何らかの権利を設定し、あるいは権利を移転する場合」です。
例えば、農地を買い受けて宅地に変更し、住宅を建築しようとする場合に、農地法第5条の許可が必要となります。つまり、農地の権利移転と転用を同時に行う場合です。
ただし、採草放牧地を農地に変更するための権利移転については農地法第5条の適用はありません。
権利移転+転用ということです。
Aさん/農地⇒Bさん/宅地 ・ Aさん/農地⇒Cさん/採草放牧地 ・
Aさん/農地⇒Dさん/その他 ・ Aさん/採草放牧地⇒Eさん/その他
許可権者
原則として都道府県知事の許可が必要です。
ただし、市街化区域内にある農地または採草放牧地については農業委員会への届出制となっています。